背景
鈴鹿サーキットのモニタリングシステムをリニューアル
国内最長のコースを誇り、国内外の著名なレースの舞台となる鈴鹿サーキットでは、目まぐるしく変わるレースの状況やコースの状態を確認するため、コースサイドに設置したカメラによるモニタリングを行っています。これまでは2009年に設置されたシステムを活用していましたが、経年変化が発生しており、また、昨今のマシン性能の向上により、さらに精度の高い監視が求められる状況を受け、この度システムの改修を実施。屋外設置に適した耐久性と優れたズーム性能、高画質な撮影能力を兼ね備えた屋外対応4Kインテグレーテッドカメラ AW-UR100GJと、IT/IPプラットフォーム KAIROSを核としたサーキットモニタリングシステムが導入されました。
導入した理由
優れたズーム性能、画質を評価
ホンダモビリティランド株式会社の安藤義隆様は新システムの選定についてこのように語ります。「コース上の落下物やトラブルの状況、走行中の違反行為の確認を行うため、カメラのズーム倍率の高さと画質の良さは特に重視したポイントです。選定に当たっては、実際に約800mあるメインストレートにAW-UR100GJを設置いただき、デモを行いました。その中で光学24倍ズーム+デジタル10倍ズームの性能の高さ、画質の良さを実感できたことが、採用の大きな決め手になりました」
導入後の効果
高倍率ズーム、優れた画質を備えた屋外対応カメラで、精度の高いモニタリングを実現
今回の改修では、計43台の屋外対応4KインテグレーテッドカメラAW-UR100GJを全長5,807mのコースサイド各所に設置。レース中のコースの路面や、走行する車両のモニタリングを行っています。実際に運用する中で実感したAW-UR100GJの性能について、安藤様はこのように語ります。
「検討時にも感じたAW-UR100GJの画質の良さ、ズームをした際の映像の精細さはやはり素晴らしいです。AW-UR100GJは光学24倍ズームに加え10倍のデジタルズームも搭載しており、非常に高倍率なズームが可能ですが、デジタルズームの性能の良さには特に驚きました。これまでデジタルズームの映像は画質が粗かったり、ノイズが発生しやすい印象があったのですが、AW-UR100GJは4K映像を用いてデジタルズームをするため、映像が非常に鮮明です。
レースではコースアウトした車両がコースに戻る際、芝生や砂利などをコース上に持ち込んでしまうことがあります。このような汚れはスピンやクラッシュの原因になりかねないことから、管制室ではコースの状況をカメラ映像で逐一モニタリングし、レースを妨げる落下物がないかの確認を行っています。以前のシステムでは、落下物を発見できてもそれが何であるかまでは映像から確認できず、コースまで見に行かなければならないなど、確認のために車両の走行を止めなければならないことがありました。しかし、高倍率かつ高画質なズーム撮影が可能なAW-UR100GJでは、50m先のコース上にある500円硬貨大の小さな落下物が何であるかまではっきりと写すことができます。レース継続の可否を管制室のMVの映像から判断できるようになったことで、レースの中断が各段に減り、より円滑なレース進行が可能になりました。加えて、AW-UR100GJは少ない光量でも明るいカラー映像が撮影できるので、日没後に車両が走行する耐久レースなどのナイトレースでの運用にも期待を寄せています。
また、AW-UR100GJの映像はメインスタンドの大型映像表示装置にも出力しています。今回の改修を経て撮影映像の画質が各段に向上したため、観客の皆さまにも一層臨場感のある走行シーンをご覧いただけるようになりました」
優れた耐久性により屋外での安定した稼動を実現
採用に当たっては、AW-UR100GJの耐久性も大きく評価されました。
「鈴鹿サーキットは海風の影響を受けやすい立地にあります。そのため、塩害に耐えられる耐久性を備えていることは選定のポイントの1つでした。採用検討時に、AW-UR100GJは耐重塩害仕様のカメラであることを伺い、また、高速道路のような、コース内と同じく頻繁なメンテンナンスが難しい場所での採用実績についても教えていただけたことで、安心して導入することができました」と安藤様はコメントします。
導入後の効果
運用しやすいモニタリング用MVをKAIROSで構築
43台のAW-UR100GJの映像は光回線で東管制室まで伝送されており、IPではなくSDIベースのシステムとすることで映像遅延を極力抑えた伝送を実現しています。東管制室では10面のモニターを用いてカメラ映像のモニタリングを行っており、内6面のMVはKairos Core 200 AT-KC200Tを用いて出力。MVの表示はKAIROSのCANVAS機能で作成しており、現在、使用目的に合わせて、レースモード、練習モード、全画面モードの3種類のレイアウトが設定されています。MVの運用性について安藤様はこのように語ります。
「改修前はカメラの台数分のモニターを設置し、カメラ1台ごとに固定のモニターを割り当てて映像を表示していたので、任意の映像をピックアップして大きく表示するなどの運用ができませんでした。新しいシステムはMVを用いたモニタリング画面になったので、運用に合わせたレイアウト、映像の割り当てをリクエストし、実現していただきました。例えば、レースモードのレイアウトでは、6面のMVの内、1面を4分割にし、レース時に違反が発生しやすいコーナーの映像を割り当てることでチェックしやすくしています」
的確なコントロールを実現する制御システム
AW-UR100GJのコントロールや画質調整、モニター映像の切り替えは特注のスイッチャーとリモートカメラコントローラーAW-RP150GJで実施しています。
スイッチャーからは、MVのレイアウト表示やカメラ映像の切り替え、ピックアップ表示する映像の選択などを行うことが可能です。また、43台のAW-UR100GJの撮影位置をボタン1つで一斉に切り替えられるプリセットも備えているなど、瞬時の判断が必要な現場で運用しやすい、直感的な操作性を実現しています。
AW-RP150GJは、レース中に車両を追尾したり、注視したいポイントにカメラを合わせるといった操作で使用します。またAW-RP150GJでは、カメラのPTZスピードやシャッタースピード、ホワイトバランスなどの細かな設定を簡単に行うこともでき、そのユーザビリティの高さが、レース時のスムーズな操作に大きく貢献していると安藤様は話します。
「納入完了後、このシステムを活用してすでに3回のレースを実施しました。AW-RP150GJは調整機能が優れており、運用中に感じた課題をその場で修正できたため、納入から約1カ月という短期間でオペレーションの精度向上、習熟を図ることができ大変助かりました。オペレーターの操作感や車両の速度に合わせてPTZスピードを調整することで、走行中の車両を追尾するような的確な操作が求められるシーンにもしっかり対応でき、確実なモニタリングを行えています」
システム構成イメージ
納入機器
- 屋外対応4Kインテグレーテッドカメラ AW-UR100GJ ×44台
- IT/IPプラットフォーム Kairos Core 200 AT-KC200T ×1台
- Kairos Creator AT-SFC10G ×1式
- リモートカメラコントローラー AW-RP150GJ ×5台
- 4K UHD液晶ディスプレイ TH-65SQE2J ×6台
- 4K UHD液晶ディスプレイ TH-50SQE2J ×4台
お客様の声
モニタリング用途に留まらない活用を検討していきたい
パナソニックの営業担当の方や、エンジニアの皆さんには、設計段階から工事の完成まで、非常に親身に対応いただきました。また、オペレーションについても丁寧なレクチャーをいただいたお陰で、納入から約1カ月という短期間でビッグレースでの運用を成功させることができました。本当にありがとうございました。
このシステムはコースのモニタリングが主な用途になっていますが、今回の改修を経て、映像の品質を飛躍的に向上することができました。そのため、今後はモニタリング用途に留まらない様々なシーンで、このシステムを活用していきたいです。例えば、カメラ映像を鈴鹿サーキットのWEBページ上から確認できるサービスの提供です。43台のカメラ映像が順番に切り替わるシーケンシャル映像をWEBページに掲載することで、お客様が当日のコースのコンディションを確認した上で来場いただけるようにしたいと考えています。また、現在、管制室の映像はHD解像度で運用していますが、AW-UR100GJは4K撮影が可能なカメラですので、この映像を活用した高画質なイベント配信の実施なども今後検討していきたいです。
モータースポーツ事業部
モータースポーツ課
チーフ 安藤 義隆様
※所属は納入時のものです。
お客様紹介
日本モータースポーツの聖地
鈴鹿サーキットは、ホンダモビリティランド株式会社様が運営するモータースポーツを核とした一大エンターテインメント施設です。施設の中心であるレーシングコースは1962年に国内初の本格的なコースとして誕生。F1日本グランプリやSUPER GT、全日本ロードレース選手権など国内外のビッグレースが開催される日本モータースポーツの聖地として広く親しまれています。
所在地:三重県鈴鹿市稲生町7992
URL:https://www.suzukacircuit.jp/